カシスオレンジと波の音
「じゃあ、来年も来れば?俺がここにいるかは微妙だけど」
「佐倉さんがいないなら、来る意味ないじゃん」
言ってからいつも気付くんだけど、大胆なこと言ってるよね、私。
「それ、俺のこと誘ってんの?大人をからかうと痛い目にあうぞ」
佐倉さんは、酔っているせいか、話し方がとてもゆっくりで優しい。
ますます好きだなって思うんだけど、より『男』を意識してしまって、どう接していいのかわからない。
愛想笑いで誤魔化して、食堂の壁に貼られた写真を見るふりをして立ち上がった。
「どうかしたのか?」
今度は、ちゃんとアルコールの入ったカシスオレンジを作る佐倉さん。
カランカランと氷の音がする。
「ううん。何でもない」