カシスオレンジと波の音
「あんなこと言ったのは、お前の気持ちがわからなかったから。俺なんか恋愛対象じゃないんじゃなかって思ってたし、俊吾達の方がよっぽどかっこいいし、どうして俺に近付いてくるんだろうってわからなかった。傷つくのが怖くて、あんな風に言ってお前の気持ちを確かめようと思った」
二度キスをすると、抱き合うことに慣れるのだろうか。
抱き合いながら話しているのに、私は普通に話すことができた。
「私……ガキだけど、からかってないし、遊びで近付いたんじゃない。自分でもわからないけど、気付いたら佐倉さんのことばっかり気になって、話したいって思って……」
おでこにそっとキスをした佐倉さんは、また名前を呼んでくれた。
「沙穂。ガキだから、まだわからないと思うけど、そういうのを……好きって言うんだよ。わかるか?」
「佐倉さん!!」
私は抱き合っているのに、もっともっと強く佐倉さんに抱きついた。