カシスオレンジと波の音
帰らないと千佳達が心配するって言ったのに、佐倉さんは、そんなのどうでもいいと言って、海岸を歩き続けた。
そこで話してくれたんだ。
私みたいな女の子がたまにいるんだって。
大人の男の人に憧れる女の子って多いみたい。
「今日の俺は特別機嫌が悪かったのに、どうして俺をきらいにならなかった?」
「機嫌悪かったの?」
「ああ、生意気でうるさいガキが3人騒いでたからな」
そう言いながら、私の好きな顔をして笑ってくれた。
「食堂に写真があるでしょ?あの中に佐倉さんのすっごい優しい笑顔の写真があったんだ。それ見て、絶対このおじさん良い人だって思ったんだ」
「おじさんって言うな~!!」
手を離した佐倉さんは、私の首の後ろに手を回した。
「その笑顔が見たかったんだ。何が何でも、佐倉さんの笑顔を見たいって思ったの」
「それってさ、一目惚れなんじゃないの?」
ニヤっと笑った佐倉さんが、本当に好き。