白衣の悪魔に首ったけ
泣いてばっかのあたしがここに居ても迷惑だろうし…




………



帰ろ…



すぐ傍から聴こえてきたため息に全てを諦めたあたしは、



とめどなく溢れる涙をタオルケットでゴシゴシと拭いながら何度か深呼吸した。



タオルケットからは仄かに先生の香り…



好きだけど…



大好きなんだけど…



忘れなきゃいけない香り。



でも…



「先生…」



「あ?」



今日だけ…



今日だけは…



この香りを忘れたくなくて…



あたしと同じこの香りに包まれて泣きたくて…



「これ…貸して…?」



「は?」



あたしは泣顔を見られないようにタオルケットを被ったまま、ボソッと先生に訊ねかけた。



今日だけ…



今日だけでいいから…



明日からは泣いたりしないから…



「お願い…先生…」



そしてギュッと目を瞑りながらタオルケットを握りしめた…

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