蝶彼
私はすぐにベッドから下りて
玄関へと向かった。
靴をはいて外に出ようとしたとき
グイッと手を掴まれた。
「玲奈」
「へ?」
変な声を出してしまった。
どうして私の名前知ってるんだろ?
そして囁くように雅が言う。
「玲奈すげえ声出してたから気をつけてね」
「は!?い,意味分かんないッッ!!!」
一瞬にして私の顔が真っ赤になる。
最後の最後まで可笑しそうに笑っていた雅。
私は家を出た。
外はうっすら明るくなっていた。
チュンチュンと鳥が鳴いている。
すぐ隣の家へと行く。
隆也家帰ってるのかな・・
ガチャッ
扉をゆっくり開ける。
玄関には隆也の靴があった。
帰ってきてる
ゆっくり
リビングへと入っていく
ソファに横になっている隆也。
さっきまで起きてたのかな?
テーブルにあった山のような缶は消えていた。
すやすやと眠ってる隆也の頬に
そっと触れる。
バレてないよね。
私は隆也にそっと毛布をかけた。
その時うっすら目を開けた隆也。
「ごめん,起こした?」
「ううん・・」
ゆっくり起き上がった隆也。
「玲奈」
そう呟いて隆也は私を抱き寄せた。
隆也の匂い。雅とは違う。
何だか安心した。
私も抱きしめ返す。
だけどすぐに引き離された。
「隆也?」
「玲奈香水変えた?」
「え?」
雅の香水私の服についちゃったかな
「変えてないよ・・?」
「そうかな」
「昨日友達の家行ってたから」
「テーブルの上にあった山の缶は?」
「友達が飲んじゃって送ってったの」
「その友達って女の子だよね?」
「うん」
「でもこれ男の香水じゃね?」
そう言って少し不思議そうに私を見た。
どうしよう・・バレる。
「友達さ,自分の彼氏の香水もってるから」
何も言わずに私のことをじっと見つめている隆也。
「そっか」
そう言って優しく微笑み私を抱きしめた隆也。
良かった,バレてない。
雅と秘密が出来た。