蝶彼

「2人だけど・・」
「こちらへどうぞ」
作りきった笑顔を彼女たちに向けて
私は店の奥へ進んでいく。
テーブルに座らせると
失礼しますと声をかけて一旦その場から
出て行くと私は水を二つ用意する。
「本当に大丈夫なの?」
そう言って苦笑いする雅を
思いっきり睨んで私は水をテーブルに置いた。

「氷多くない?」
「こっち水少ないし・・てか濡れてるー」
「失礼いたします」
「ちょっと・・新しいのに取り替えてください」
「少々お待ちください」
ありったけの笑顔を向けて私はカウンターに戻った
おもしろそうに厨房で見ていた雅。
もう・・絶対負けないし
もう一度水を用意する,今度は氷も大丈夫だし
コップも濡れていない。

パスタを雅が私に預けた。
「行ってきます」
彼女たちのところへ向かう。
「お待たせしました」
そう言って料理をテーブルに置く。
「なんかさぁメニューと見た目違うよねぇ」
「だから~」
頭の中がピキピキと言っているのが分かった
あぁーもう限界かもしれないっ
私には接客合ってないのかな?

「申し訳ありません」
そう言った瞬間
ふと香水の香りが漂った。
隣を見ると雅が立っている。
一瞬で顔を真っ赤にする彼女たち。
惚れちゃったの??

「いろいろとご不満がありましたら
どうぞ気軽にお声かけ下さい」
そう言って優しく笑顔を振りまいた雅。
何・・この笑顔・・なんか悔しい
「いえッ全然大丈夫でーす!!」
そう言って声をイチオクターブ高くした彼女たち
何なの?こいつらー・・

「失礼いたします」
そう言って私の手をとってその場を後にした。


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