蝶彼

ごみ出しをしてから
私は家に戻ってきたけど
あれっきり男は顔を出してこないし
いつも通り過ごした。

夜食の準備をしなきゃと
エプロンを着ていると受信されたメール一件。

いつもと内容が同じ。
「ごめん,今日も仕事で帰れない」
最近ずっとこれ。
まぁ馴れたからいいけど。

私は携帯をそっと置いて
エプロンを外した。

やる気失せちゃった・・。
近くのコンビニでなんか買おう。
私は財布だけをもち家を出た。

家に戻ると
隣の家から出てきた男。
たばこを吸っている。

私は無言で通り過ぎようとした
その時
ガッと手首を捉まれて男を見ると
嬉しそうなどこか寂しそうな顔をしていた。

「彼氏今日も残業?」
「・何でそれを」
「だって聞こえるって言ったじゃん。
最近彼氏のただいまぁって声聞こえないしね」

黙っている私をおもしろそうに
覗いてきた男。

「俺の家おいでよ」
「どうして?」
「今日は俺も1人だから」
「いやッ・・」

ぐいっと引っ張られ
しゃがみこんでいた彼に
覆いかぶさるような体制になってしまった。
そして呼吸をする時間もない
一瞬のことであった。

そのまま腕をひっぱられ
彼の唇と私の唇が重なった。

この人キスうまッッ

そんなことを思っていたらすぐに
離されてしまって今度は
片手で軽々と私を立ち上がらせた。

「な,なにすんのよッ」
「いや・・別に」

そう言いながらも
私の腕をまた引っ張り
家の中へと引きずり込んだ。






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