蝶彼
「おはようございます」
「・・おはようございます」
「隣の者です,回覧板渡しに」
営業スマイルで隆也を見る雅。
「あぁ・・ありがとうございます」
「でわ」
そう言って隆也に軽く礼をする雅は
最後に私を見て悪魔のように微笑んだ。
ドアが閉まり私はため息をもらす。
「知り合い?」
「ううん」
「俺隣の人初めて見た」
そう言ってリビングに戻る隆也。
「・・そうなんだ」
もうドキドキさせないでよ。
隆也に何か言うのかとハラハラしている自分。
何緊張してんの?
別に・・悪いことなんて・・したか。
罪悪感。
コーヒーを飲みながら
携帯をいじってる隆也。
そんな隆也をボーっとただ眺めてる私。
「ねぇ隆也?」
「ん?」
「今日はバイト休みだし家ずっといるんだよね?」
「悪い,今日も飲み行く」
「・・そう」
またか。
そんなに友達付き合いが大事?
彼女よりも?
本当なんだか哀しくなるよ。
すぐに着替えて
家を出てしまった隆也。
寂しく立ち尽くす私。
私って隆也の何?
愛されてるとは思う。
愛してるとも思う。
だけど
何だか足りないものがある。
何だろう?