secret WISH




話しって何なんだ?



チャロに手を引かれるままに、大広間を出た。
暫く進んで、さっきの玄関(?)辺りに来るとチャロが足を止めた。
ぶつかりそうになって、慌てて俺も止まる。

『なにしたい?』

振り返るチャロの顔は、初めて 近くで見た。
俺を見上げる綺麗な目の色。
長いグレーの髪に、俺よりも小さな手。

そうだな、父さんは此処は広くて迷ってしまったんだよな。
俺は絶対に迷いたくないし‥

『ここ、まよったりする?』

『しないよ、すんでるんだもん』

『ならさ、案内してくれねぇかな?』

うん、と頷いたチャロは弾んだ足取りで歩き出した。
街から大分離れている此処の辺り。
馬車の窓から外を覗いていたけど
民家とかは近くに全然なかった。
友だち、いない‥?
だったらいつも一人で遊んでんのかな?

『ねぇ、なまえセレス?』

『あぁ』

一つの扉を開けながら、チャロは振り向いた。
チャロの向こうには、図書館並みに本が並んでいた。

『セレスってよんでいい?』

『いいよ、チャロ』

名前を言うと、チャロは嬉しそうに笑った。
初めて、お父さんとお母さん以外の人に名前だけを呼ばれたと。
‥やっぱり、一人なんじゃん。

『さみしくねぇ?こんなところで一人だろ?』

『なんで?おとうさんもおかあさんもいるのに』

そう言いながら、チャロは俺の手を取った。
さぁ、次々!!
そしてその後見て回ったのは、
広い舞踏会場に小広間に二階からの沢山の部屋。
あ、浴場も見たぞ。
ありゃ余裕で泳げる広さだった。
舞踏会とかが開かれる時に、来てくれた人を泊めるらしい。
それであんなに部屋が多かったり風呂デカいんだな。

『さいごは、ここ』

ゆっくりと開かれたドア。
その部屋には大きなクマのぬいぐるみや
可愛く装飾されたふかふかのベッド。

『わたしの、へやなの』

ぼふんっとベッドに飛び込みこんで、チャロは手招き。
俺は大きなクマのぬいぐるみを眺めながら部屋に入った。
チャロはベッドから一度降りて、
服が入ったクローゼットの中に入り込むと本を手にした。
そして再びベッドに上がる。

『ねぇ、これよんで?わたしむずかしいの、よめないの』

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