secret WISH
そう言われて、俺もベッドに上がった。
チャロが手にしている本を覗きこむ。
『‘ロメオとジュリエット’?』
『それね、おかあさんがまえによんでたから、“よんで?”ってたのんだけど よんでくれなくて‥』
ずいっと差し出される本。
幼児用なんだろうか。
本当なら5章あって厚い筈なんだが
イラストがあって、多少薄かった。
明日此処で舞踏会があるから、
今日は此処に泊まるって言っていたな。
この厚さなら、明日もあるんだから読み終わるだろうし。
『いいよ、読んでやる』
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読んでいる途中、ぽすんとチャロが寝転んだ。
吃驚したけど、耳を澄ますと寝息を立てていた。
‥人が折角読んであげてんのに。
と思ったけど、寝顔見たらそんな嫌悪感は何処かへ。
かわいいな。
妹がいたらこんな感じなんだろうな。
俺はチャロを抱えてちゃんとベットに寝かせると
枕元に本を置いて部屋を出た。
えーと、確かこの階段を降りて
この大きな花瓶がある廊下を右に曲がって‥
あれ?行き止まり?
あ、さっきは逆からだったから左か。
そうそう、こっちこっち。
それで‥この絵画さっき見たな。
じゃあここをもう一回左に‥
俺は時々迷いながらも、記憶を頼りに進んだ。
この家、やたらと扉多いし行き止まりあるし。
迷路みたいだ。
そして、やっと辿り着いた大広間。
‥まだ話してんのか?
『‥ている最中なの』
『でも、ここ3年は何にもなくてな、ここで暮らしている』
『そう。だけどね、万が一の事があったら‥』
『それで暫く、チャロちゃんを預かって欲しいと?』
‥は?
チャロを家で預かる?
え、何で?