secret WISH

本を読んでいる時に、ちらりと扉に視線を寄越せば
俺とチャロの父さん母さんが俺たちを覗いていた。
それに気付いたチャロは、扉を盛大に開けてベニトおじちゃんに飛び付いた。

『あのね、わたしだいじょうぶだよ!』

『え?』

『しばらくおとうさんとおかあさんからはなれても、だいじょうぶ!』

『チャロ‥』

『だってセレスがいっしょだもん!さびしくない!!』

二コッと俺を振り返って笑ったチャロは、無邪気な顔だった。
そんなチャロの姿に、優しい顔で笑うルベおばちゃんだけど
チャロを抱えたベニトおじちゃんに、俺は睨まれていた。
‥ぇ、何、何?
俺何かしました!?

『ベッドの上で本読みなんて~、ロマンチック~』

わははと父さんが笑う。
母さんが部屋に入ってきて、本を覗いた。

『あら、‘ロメオとジュリエット’なんて読んでるわよ?ホントにロマンチック~』

キャーと声を上げる母さんを見るのは、今日何度目だっけ?
チャロはベニトおじちゃんから降りると
ベッドに上がって俺に後ろからしがみ付いた。

『ねぇ、つづきつづき!!』

『あ、あぁ』

いつの間にか雨が止んで。
雷も何処か遠くへ。
静けさを戻した森のお城の中で



『娘は絶対に渡さ―――――ん‥ッ!!』



と、雄叫びが木霊した。


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