secret WISH



そんな俺に不自由の無い生活をくれている爺さんには
本当に心から感謝している。

だから思うんだよ。

本当に神様みてぇな人だなって。


遠くの方で、図書室の扉が開く音がした。
それを合図に爺さんは本を閉じて、机の上を適当に片付けた。
微かに香る、美味しそうなスープの香り。
カチャカチャと食器の揺れる音に、昼食の時間だと知らされる。

「もう、昼か」

「さっきまで寝ていたからのぉ、お前は」

「んじゃ、俺はそろそろ行くわ」

「お前も食べていかんか?」

「‥いや、今日ちょっと食欲湧かねぇんだ」

「そうか」


時々、爺さんと食事をとる。
若いせいか、ドルガー狩りによく出される俺は
昼間なかなか此処にはいない。

だからいる時には、食堂よりも図書館で
爺さんと食事をとる事が多い。

本当は此処での飲食は禁止の筈なんだが‥

「お待たせ致しました」

「うむ、有難う」

それは、私有者の権限とやらなんだろう。

テーブルの上に並んだのはラムのステーキと
爺さんの好きなライ麦パンに、オニオンスープ。
サニーレタスとフルーツトマトが中心のサラダに
最近気に入ったという、日本の緑茶。

いつもなら、俺も食事をとるけど、

「ちょっと出てくるわ」

「何処に行くんじゃ?」

「現場ッ!」





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