secret WISH




抜けてしまった床を眺めている暇なんてなかった。
ビシビシと壁や床に亀裂の入る音が聞こえて、
俺たちは急いで階段を駆け降りた。

周りには逃げ惑う人々。
さっきまで舞踏会場に入っていた人たちが
何かを叫びながら城から出ていこうと走る。

『っ、父さん!母さんッ!』

俺はその人たちの中に目を凝らした。
父さんと母さんは何処に行ったんだ!?
人の流れに逆らって会場に入ろうとすると
チャロも俺に付いてきた。

やっとの事で入った会場。
並べてあっただろう机は引っ繰り返され、
中には真っ二つに割れているものも。
綺麗なシャンデリアも、床に無残な姿で落ちていた。
ガラスは割れて、キラキラと床に散らばっている。

『‥なに、あの‥ひと?』

チャロの言葉に、俺は何も返せなかった。
そこにいた女は手から光線を出していた。
ドンッドンッと飛ばされるその光は大砲の弾の様だ。
城の壁に当たれば、大きな穴が開く。
そんなことは、どうでもいい。
そんな事より‥



『‥父、さん‥母さん‥?』


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