secret WISH




チャロは、強かった。

さあ‥行くんだ、と離されたその手に再び掴まろうとはしなかった。
ただ静かに頷いて、代わりに俺の手を取った。
ベニトおじちゃんが城の瓦礫から見つけ出したマントを2人とも被されて
キッチンがあったであろう場所から、保存食が入った袋を渡された。
これで、3日は持つだろう。
そう言われたけど、3日で自分の町に帰れる自信はなかった。
‥きっと俺の足で、1週間は掛るんじゃねぇかな。
大人ならそのくらいで行けるかもしれない。
でも、俺は子供だし体力だって大人に比べたら全然ないし。

城の敷地から出ると、チャロは一度城を振り返った。
その表情は、寂しそうとか、悲しそうとか。
そんなものよりも真っ先に思うのは‥、辛そう。
それが妥当だった。

『‥バイバイ』

一言が、重たかった。
いつもなら聞き流すくらいの軽い別れ言葉なのに。
この時ばっかりは、そうは思えなくて‥。

『まち、どのくらいさきなの?』

『ずーっと、ずっと向こうだよ』

『ずっと?』

『遠くに見えるあの山をこえないといけないから』

歩きながら指差したその山は、ずっと遠くにあった。
そっか、と小さく頷いた言葉に何も返せなくて。



ただ、俺よりも小さな手を
強く握った。






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