secret WISH
城から歩いて4日目の早朝。
やっと、山の頂上に付いた。
山の麓を見ると、あの白い花が沢山咲いているのが見えて。
遠く、正面の方をみると崩れた城が見えた。
‥‥あんま、見ていいもんじゃねぇな。
そう思って、俺はチャロの手を引いたけど
チャロは暫くそこから動かなかった。
ただじっと、城を見つめていたその瞳から雫が落ちた時。
チャロはこれから進む道に向いた。
『‥いこう』
小さな声に、俺はその手をもう一度引いた。
俺も泣きたいけど、涙なんか見せられない。
今、チャロを支えられるのは俺だけ。
だから俺がしっかりしてねぇと!
そう自分に言い聞かせて、最後にちらりと城を振り返った。
父さんのゴツゴツしているけど優しい手が無くても
俺は自分を守れるようになるよ。
母さんの何でも出来る綺麗な魔法の手がなくても
俺は自分のことは何でも出来る様になるよ。
そうしないと、俺を見てて不安になるだろ?
『‥あー、降ってきたな』
『うん、あめだね』
ぽつぽつと降る雨に、俺たちは一度立ち止まった。
でも、この山下ってちょっと歩けばもう直ぐ町だし。
そう思って、俺はまた歩き出した。
雨で濡れるせいで、持っている荷物の紐が滑る。
食料はあと少しだし重くはないけど、滑るもんは滑る。
俺は荷物を両手で持つことにして、チャロの手を離した。
少しずつ強くなってくる雨に、道に溜まってくる水。
歩く度にパシャパシャと跳ねる音。
何気にコレ、体力を奪うんだよなぁ‥。
雷は鳴ってないけど、
昼にも拘らず辺りが暗い。
見上げると真っ黒い雲が俺たちの上にいた。