secret WISH





“しんぞう”なの。




『‥心臓?』

『うん、エル・ディアブロのいちぞくはヒトだっていわれているけど、』
ふしぎなちからがつかえたり。
しんぞうがからだのなかにあるんじゃなくて、こういう‥いしだったり。
『モンスターに、ちかいよね』

『‥チャロも、その一族なのか?』

『うん、そうきいた』

石‥いや、自分の心臓を撫でるチャロは、そういうモノには見えなかった。
肌の感覚に、体温、見た目。
食べるものも一緒なんだ。
人間にしか見えないけど‥、俺と一緒じゃない。

なんだろ、何か寂しくなってきた。

思わずその顔から視線を外して、俺は水溜りで占領された道を見た。
俺とお前、何が違うんだ?
そう言っても、今はチャロから答えが返ってくる気はしなかった。

ただ、数年後。
もうちょっと大きくなった時に訊いたら、答えは返ってくるだろう。
その時なんて言われるかな。

‘人間とエル・ディアブロは全然違う’

一緒に生きる事なんて出来ないとか言われたら、ショックかも。
あ、でも‥ベニトおじちゃんはエル・ディアブロで
ルベおばちゃんは人間なんだから
一緒には生きれるか。

でも、それってベニトおじちゃんがルベおばちゃんを
特別だって思ったからだろ?
‥チャロは、どうなんかな。

視線を元に戻すと、チャロはウトウトと俺に寄り掛ってきた。
朝からずっと歩きっ放しだったもんな。
俺も何だかんだ言って疲れたし。
木による掛かると眠気が一気に襲いかかってきて
俺は慌てて背を張った。

‥俺が寝ちゃ、もしもの時困るだろ!

首にチャロの髪が当たって、くすぐったい。
俺は髪を退かすと、寝てしまったチャロの顔を覗いた。

『‥ぇ、なんだ、コレ』

チャロの体の所々から、何かが‥‥
黒い、渦が。
シュワシュワと泡の様に出てきて‥



“‥チャロも、その一族なのか?”

“うん、そうきいた”


さっきの会話を思い出して、何故か恐怖が過った。
このまま見ていると、チャロが別人になってしまいそうで。
チャロが‥、居なくなってしまいそうで。

俺は雨で冷えたその手をとって、
チャロの目が覚めるまで、ただ握り締めたんだ。

< 134 / 173 >

この作品をシェア

pagetop