secret WISH
治安署から外に出て、俺は目を疑った。
‥誰も、いない。
部屋から出て、治安署に誰一人いなかったのが不審だった。
でも、外に出れば誰かに会うだろうと思っていたけど‥
『人、いねぇな‥』
お爺さんも、何処に行ったんだろう。
ポツリと吐いた言葉に、チャロは曖昧な返事をした。
昼間の今、街で誰一人見かけないなんて‥おかしくないか?
犬一匹、猫一匹も見やしない。
疑問を抱えながら、俺はチャロについて行った。
何だか、変な気分だ。
城から町にくるまで、チャロは俺の後ろをついて来ていたのに。
今度は俺がついて行っている。
あぁ、人の後ろついて行っているだけって‥何か、怖いかも。
別に知らない人について行ってるわけじゃない。
一応心を許している人だけど、そう‥なんだけど‥
その背がだんだん小さくなって。
いなくなって、しまいそうで。
俺は気が付けばチャロの手を掴んでいた。
『どうしたの?』
『‥あ、いや‥なんか、わかんねぇ、けど‥』
言葉に詰まって俯くと、チャロは何も言わずに俺の手を握り返した。
少し、泣きそうな顔をして。
チャロには言えない。
お前が、遠くに行ってしまいそうで。
だから怖くなって、その手を掴んだ‥なんて。