secret WISH


「様子見に行った方がいいかもね。クラーヂマンは聴取室に入れるはずだから」

とすん、と俺の頭の上に乗ったオニキスはすぅっと目を閉じた。
途端に黒くなる視界に、瞬きをすれば聴取館の入り口。
いそいそと俺のポケットに入ったオニキスは、
早く入れと言う様にポケットの中から俺を蹴飛ばした。

コイツ、焦り過ぎて自分がモーメントムーブ出来るの忘れてたな‥。

着ている服の袖をズラして、門番に紋章を見せて館内に入る。
その瞬間、鉄の臭いがして顔を顰めた。
‥拷問って、酷い事沢山してんだろうな。

館内を歩いて事務室の前のボードを覗いた。
今日、聴取すんのは‥

「チャロだけ」

なら、直ぐに見つかる筈だ。
駆け足交じりに廊下を歩いて行く。
ポケットの中でバタバタと暴れ出すオニキスに、大きくなる不安。
角を曲がった時に見張りを付けた聴取室を見つけた。
日の当たらない暗い場所にある聴取室に、嫌な空気を感じる。
あの見張り‥、黒いマントとお面を付けてやがる?

「全く、懲りないよな“あの人”も」

「あぁ、最初担当するはずだった人、エル・ディアブロが怖いからって“あの人”に頼んだんだろ?」

「『いい獲物がきた』って凄く喜んでたし」

「ははっ、俺たちにもヤらせてくれるんだろ?」


‥は、何言ってんだコイツら!!
俺はここから踏み出そうとしたが、留まった。
もしここで飛び出して、コイツらを止めたら任務妨害になる、か?
しかも顔見られたら御終いだ。
下を向いてぐるぐると考えていると、急に暗くなる視界。
まさか待ちきれなくなったオニキスがモーメントムーブさせたかと思ったが
感じる重さに手を伸ばせば、漆黒のマント。
兄元にはお面を引き摺るオニキス。
何処から持って来たのかと首を回せば、正面の聴取室にあったらしい。

「オニキスナイス!」

お互いにニッと笑って、俺は素早くマントを羽織ってお面を付けた。
そしてオニキスはマントの裏ポケットへ。

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