secret WISH
行き成り吐かれた言葉に、俺の顔はきっと間抜け面だ。
そ、そんなこと言われても返事に困るって!
‥訊いたのは、俺だけど。
「えー、と‥。何で?」
「‥僕が、左目失くしたでしょう?それを自分のせいだと思っているみたいでね」
確かにこれは、ファントムを庇って負って、失くした。
でも僕はそれを後悔していないよ。
ファントムが傷付くより、自分が傷ついた方がよっぽどマシだからね。
左目の上に付けた眼帯を撫でながら、兄さんは目を細めた。
「それで、手術が終わった後。直ぐに上から提案がきたんだ」
守り師の護衛から降りた方がいいのではないかと。
「それ聞いた時はショックだったけど、仕方のない事だ」
両目がそろった視界と、片目だけの視界は違いすぎる。
しかも左目は僕の利き目。
今もちょっと距離感掴み難くて、カップを割ったりするくらいだから。
こんな僕に、ファントムは守れない。
「そう思って、僕は守り師の護衛を降りる事にした」
「‥ファントムは、何て?」
「首を縦に振る事は、しなかったよ」
『あたしがもっと強い結界を張れる様になる!!そうしたら昨日みたいに敵が来たって、誰も怪我しないでしょ!?』
『そう言う問題じゃないんだよ、ファントム。お前が強くなっても意味が無いんだ。お前を守る人の話なんだ』
『あたしは守られなくてもいいの!デュモルチェと一緒にいたいの!!』
『‥一緒にいる事は、出来ないよ』
『え?』
『だって、お前はモンスターで、僕は人間。‥立場が違う』
「ファントムが言う事聞かないもんだから、そう言ってしまってね」
「‥兄貴、それは‥」
「うん、言い過ぎなのは僕が一番理解しているつもりだよ」
そう言ってしまった時のファントムの顔がね、
あまりにも傷付いた顔をしていた。
自分で言った言葉に、僕は後悔を隠し切れずに唇を噛んだ。
「かなりのショックを受けただろうね、ファントムは」
その時の事が頭を過っているのだろう。
兄貴は今言った様に、唇を噛みしめた。
「それで、出て行ったのか?」
「‥あぁ、今頃何してんだろうね」