secret WISH
ファントムを探す様に窓の外を覗く兄貴は
見える視界の狭さが歯痒いのか、左目があったところを
眼帯の上から手で押さえた。
「探さねぇのか?」
「出来れば今すぐに探しに行きたいよ。‥でも、僕は臆病者なんだ」
「でも、そういうのは早めがいいってか‥、謝ればいいじゃねぇか」
「まぁね。護衛については今ならまだ、取り消しが効くからいいけど‥」
「けど?」
「問題は、それだけじゃないんだよ」
ファントムの話をして、この時兄貴は初めて笑った。
といっても、困ったような表情まじり。
俺は眉を顰めた。
それを見た兄貴は俺に酷い顔だと言いながら、
人差し指で俺の眉間をぐりぐりと押した。
「ファントム、体が大きくなっても胸ないでしょ」
「ん? うー、そういや、そうっぽいかな」
「‥‥ファントムの種族にはね、」
性別が、無いんだ。
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥は?」
たっぷり10秒ほど。
やっと出た言葉がこの一文字。
え、え~と‥今何と?
「性別が無いって‥、繁殖は?」
「訊くところソコ? お盛んなのかな?セレスくん」
「だっ、違っ!だって!!」
「繁殖はよく分かんないけど、2匹いればいいみたい」
『2匹』という言葉に俺は引っ掛かった。
‥けど、それが正しいんだよな。
どんなに人間と似ていても、モンスターの数え方はそれ。
そこに人間とモンスターの境を感じて、複雑な気持ちになった。
エル・ディアブロは、人間だから“人”だけどさ。