secret WISH
嫉妬とナイフ
一ヵ月なんて、あっという間だ。
たったの31日間。
それだけで相手を本気にさせるなんて
出来るわけが無い。
自分だけが好きでいて。
その気持ちを押し付けて。
相手を困らせる様な事してもいいのだろうか。
そう思ってしまってから
俺はアメスに手ぇ出しかけたけど、出してないし。
アメスからは、ほっぺにチューされたけど。
‥好きという言葉だって、吐いてない。
あの時だけだ。
『俺と愛し合ってくれない?』
決して告白とは言えないけど、
アメスへ“そういう”言葉を言ったのは。
毎日毎日、俺にドルガー退治の仕事が入る中。
アメスは大体俺がいる時間に部屋に来ては
他愛の無い話をして、モーメントムーブとやらで消える。
よく笑って話してはいるが
時々、寂しそうな表情を浮かべる事がある。
‥だれか、大切な人でも亡くしたのだろうか。
そう思ったけど、それさえ訊けない。
余り隙を見せると、殺されるかもしれない。
そんな考えがアメスとの時間を邪魔するんだ。
そのせいで、あまり素直に笑えてない。
ならばそんな事考えない様にすればいいだけ。
でも、そう思ってしまえば逆に意識してしまうもので。
俺たち見つめるオニキスの瞳が、時々痛い。
「‥はぁ」
図書室の机に体を預けて、本を枕にしている。
隣で爺さんは、黙々と本を読んでいた。
だが‥
「どうしたんじゃ?セレス」
「‥どうしたんだろなぁ、俺」
質問の答えになっていない事を吐いては、
ゴツン、と本に頭をぶつける。
さっきからこうしてばかりだ。
「‥恋の悩みか?」
「はぁ‥ッ!?」
そう言われて俺は飛び起きた。
何なんだ、この爺さん。
「ほほっ、お前もそういう歳じゃのぉ」
ワシも昔は青春した。
ほのぼのと懐かしそうに笑う爺さんは、パタリと本を閉じた。
別の本を手に取って、またそれを読みだす。
「うまくいかんのか?」
「‥まぁ、簡単にいくもんじゃねぇだろ」
「そうじゃな‥」
本を捲る音に混じって、遠くの方から利用者の話し声が聞こえた。
窓からこぼれる日が、妙に眩しくて目を細めた。
また、うつ伏せる。