secret WISH
真っ暗な部屋の中。
五感を頼りにして、ベッドに倒れ込んだ。
ドルガーと戦った疲労感よりも
今の俺を満たしているのは
さっきの、アイツが消えた方を見つめるアメスの姿。
アイツの事、好きなんだ。
そう思ったらもう、自分の行く末が分かって。
そんなんなら、俺に顔を出す事なんてしなくていいのに。
放っておけばいいのに。
無駄に、期待させて欲しくねぇ。
枕に顔を埋めると、オニキスが頭に乗ってきた。
小さな小さな手が、左右に動いている。
慰めてくれてんのか?
オニキスを頭から降ろして、向き合った。
手の中にいるのは、倒す対象のモノなのに
小さなぬいぐるみがいるような
小さなペットがいる様な感覚だ。
「何か俺、ムカついてんだ」
失望感?
そんなものよりも大きいのは、この嫉妬心。
アメスに触れたあの男には怒り。
あの男が消えた方を見つめるアメスには絶望。
でも、俺とアメスはちゃんとした
恋人とかではない訳で。
ぐちゃぐちゃと心の中が乱れている。
ぐるぐると黒い感情が渦巻く。
これ、どうしたら消えんだろう‥。
「電気も付けないで、何しているんですか?」
今日は月が雲に隠れているから、電気を付けないと真っ暗ですよ。
そう言いながら部屋の中に現れたのは、アメスだ。
俺は返事を返さず、静かにオニキスを離した。
パタパタとオニキスはアメスの方へ飛んで行く。
雲のから一瞬現れた月が、机の上の果物とナイフを照らした。
ダメだ‥。
何か、もう、どうでもいい。
「‥なぁ、何でお前此処に来るんだ?」
「え?」
「此処に来る必要、無いんじゃねぇの?」
俺の問いに、アメスは眉を潜めた。
どういう意味ですか?と。
「だから、最初から殺そうとしている奴の処になんか、来なくたっていいって言ってるんだよ‥ッ」
つい荒げてしまった声に、アメスの瞳が揺れた。
しまった、と一瞬だけ思うがブレーキは利かない。
「さっき見たんだよ、下の通りの路地にいるのを」
「‥そうですか」
「アイツ何?エル・ディアブロか?それとも‥」
俺と同じ様に、“生かしてやってる”奴か?
「‥‥仲間ですよ、彼もエル・ディアブロです」