secret WISH
アメスは確かに俺にナイフを向けたが、全然的外れだ。
「‥何処、狙ってんだ」
ナイフを握る手に、手を掛ける。
微かに震えているのは
もしかして、俺を殺す事を拒んでのか?
違うよな、喜んでんだよな。
ナイフを握ったその手を俺は強く握った。
そして、それを‥
自分の、左胸へ。
「普通、狙うの此処だろ?」
自分の命が奪われる。
そんな危険な場面なのに、笑う余裕があった。
俺、どうしちまったんだろ。
頭のどこかでそう思うけど、そんなのどうでも良かった。
アメスが他の奴を想うなら‥‥
アメスが自分を想ってくれないなら
死んだ方が、良い。
そう思ったら、止まない。
「さっさと殺れよ‥ッ!!」
言うと同時に、左胸が圧迫した。
走る痛みにアメスを見上げれば、ぽろぽろと涙を零している。
ザァァァ‥と雨の降る音だけが、耳を支配した。