secret WISH
カランッとナイフの落ちる音。
両手で顔を隠すアメスは、俺の胸に体を預けた。
さっき左胸に走ったのは、
ナイフを刺した様な鋭い痛みではなく
アメスから胸を殴られた、鈍い痛み。
「‥何で、お前が泣いてんだよ」
そう訊いても、アメスは何も答えてくれなかった。
ただ泣いているだけで、時々しゃくり上げてて。
‥やり過ぎた?
だけど、アメスは俺を殺す事を望んでいたんじゃねぇのか?
一人で思いを巡らせていると、アメスが口を開いた。
「‥私の、せいですか?」
「‥え?」
そっと指を指す部屋の隅。
そこにはオニキスと‥
「‥なんだよ、アレ」
沢山の螺旋の塊が、ぐにゅぐにゅと動いていた。
「あれは、貴方の心です‥」
「ここ、ろ?」
「そうです。‥ドルガーの、源です」
アメスに視線を戻すと、
アメスは視線を外した。
泣き顔が見られるのが嫌なのか
俯き状態で、話出す。
「ドルガーというのは、もともと‥人の心から出来ているんです」
悲しみや怨めし、恐怖。
そして‥‥憎しみから。
それが深いものであればあるほど、ドルガーは形になりやすい。
そして体を得たドルガーは
「その源となった人を、喰らうんです」
「‥!」
「骨も何も残さずに‥」
オニキスは口を開くと、パクリとソレに噛みついた。
すると見る見るうちに小さくなって、それは小さな石になる。
真っ黒な、石に。
それを持ってこっちに飛んでくると、アメスにソレを渡した。
アメスは何も言わずに、ポケットにソレを仕舞った。