secret WISH
「え、会っていいもんなのか?」
「ああ、クラーヂマンは出入り自由だからね」
爺さんを残して図書館を出た俺たちは
階段を上っていく。
時々、兄貴は絵本を持ちかえながら。
「屋上に上がったところに部屋あんだよな?」
「ああ」
「一回部屋戻ってくるから、その後行くわ」
「そう? じゃあ僕も一回部屋に戻っていくよ。部屋にまだ絵本あるから」
兄貴と別れると、俺は足早に部屋に戻った。
アメスに屋上に行ってくるって言わねぇと。
‥もし一緒に行きたいって言っても
連れていくのは危険だからオニキスと留守番だな。
「アメス、いるか?」
部屋に戻って名前を呼ぶが、返事がなかった。
不審に思い部屋に入ると、オニキスがパタパタと忙しく飛び回っている。
‥一瞬、
デカイゴキブリだと思ったなんて。
口が裂けても言えねぇ‥
オニキスは俺に気付くと、お決まりの顔面ダイブ。
その後、俺に捕まえられる前にペンを手に取った。
「どうしたんだよ、そんなに慌てて」
がりがりといつもより乱暴に書かれる字。
“アメスが危ない”
「は!?アメス部屋にいねぇの!?」
コクコクと首が千切れる位の勢いで頷くオニキス。
俺のジャケットを引っ張ると、早く部屋から出る様に仕向けた。
「お前、アメスの居場所分かるんだったな!?」
“そうだからさっさと行くぞ”と言う様に
オニキスはジャケットのポケットに入った。
ジャケットが黒くて助かったと思いながら
オニキスが指さす方へ走る。
部屋を出て、階段まで行くと俺は立ち止まった。
「下じゃねぇのか?」
小声で尋ねれば、頷く。
‥上って、この先は“守り師”の部屋だけだぞ?
俺は階段を駆け上がった。
階段を上がったところの突き当たり。
鉄で出来た重たい扉の向こうから、ドンッと音がした。
オニキスをポケットに押し込むと、俺は扉を開いた。
「アメス‥ッ!」