secret WISH


「ゴメンね、セレス」

「いや、俺は大丈夫だ」

「ほら、お前もゴメンなさいして」

「‥や、だぁ」

まだえぐえぐと泣くそいつは、兄貴にしっかりしがみついていた。


『綺麗で、神々しくて、可愛いかな』
確かに、大人の姿はそうだった。

『でも子供で、我が儘で、一度暴走すると止められない』
そう言うけど、兄貴しっかり止められてんじゃん。


「ねぇ、その子本当に信用出来るの?」

「‥エル・ディアブロだからそんな事訊くのか?」

そう訊くと、兄貴は黙り込んでしまった。
何で、エル・ディアブロだからって
そんなに疑いの目を向けてくるのだろう。

‥いや、違う。

俺も最初はアメスの事を毎日疑って生きてきた。
だから‥、他の人を悪く言う事は出来ない。
けど‥‥

「そうだね、人間じゃないからって‥こういう訊き方はいけなかったかな」
僕が抱いているファントムも、人間じゃないのに
こういう言い方はいけなかった。
「でも、信用出来る存在なのか?」

そう訊く兄貴の胸で、“守り師”‥ファントムは眉を顰めた。
そうか、コイツも人間じゃないんだ。

「大丈夫だよ、兄貴」
コイツは、信用してやって。


真剣な声で、俺は真っすぐに言った。
兄貴は一瞬驚いた顔をしたけど、ぽんぽんと俺の頭を撫でた。

「お前にとって守るべきモノがその子のように、僕にとってはファントムが守るべきモノなんだ」
だから絶対に守ってやりたくて。
絶対に傷付けたくなくて。
「こいつ守れるなら、何が犠牲になっても構わないって思うほどなんだ」


「言いたいコト、分かるな?」と兄貴は俺を見た。
真っ直ぐで、綺麗な瞳に次はファントムを映しながら

「今は見逃してあげるし、誰にもお前たちの事は言わないであげる」
「‥兄貴」
「でももし、この子が僕たちを脅かす存在だと僕が思った時‥、」




覚悟、しておくんだね。




「‥ああ、ありがとな、兄貴」

「いいえ。ということで、セレス君?」

「え?」

「交換条件ってコトでさ」




僕とファントムの関係もそういうことなんだ。
黙っててくれよ?





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