secret WISH
広い駅から出て直ぐに見える、大きな城。
それが今日の俺たちの任務の場所だ。
今日の夜に舞踏会があるらしく、それに参加してこいって
街の住民が“誰もいない”筈だろうに‥‥
「賑わってんな、街は」
「資料と矛盾しすぎだろ、コレ」
街は人で溢れていて、お祭り騒ぎだ。
その人ゴミの中、路地から俺たちを呼ぶ声がした。
「モルダ、セレスくん!」
「お、リビアン」
路地から手招きをするのは、リビアン・グラス。
リビアンは昨日の夕方からここに来て、先に現場の下見をしている。
リビアンに会うなり抱きつくモルダは、いつもの事だ。
「俺がいなくて寂しかったろ~?」
「んな訳ないわよ~」
そう言ってモルダの腹を殴るリビアンも、いつも事。
昨日言っていた『約束』は、リビアンの御見送りだった。
昨日の今日なのに、涙目のモルダは、
よっぽどリビアンが好きなんだな。
2人は幼馴染で、信頼は厚い‥筈なのだが‥‥
「ごめんね、セレスくん。こんなの放ってお城へ行きましょう」
殴られて地面に倒れているモルダを踏み潰すリビアン。
ぐぇっと蛙様な声を出したモルダは、
慌てて起きてリビアンの後を追った。
ゴメンゴメンとモルダが謝って。
許さないと言いながら笑っているリビアン。
‥うん、これもいつもの事だ。