secret WISH


アメスはずんずんと足を進め、
俺を誰もいないテラスに連れてくる。

「どうしたんだよアメス!」

「さっきから見ていれば何なんですか!?可愛い女の人ばっかりと踊って!」

「は、はぁ!? そう言うお前だってアイツとずーっと一緒にいるじゃねぇか!」

「仕方ないじゃないですか!離れたくてもなかなか離してくれないんです!」

ぷくぅっと頬を膨らませているアメスに、
何だか笑いが込み上げてきた。
今までこんな事、あったっけ?
アメスが感情剥き出しにして‥‥

「妬いてんの?」

「‥私にだって、感情はあります。セレスさんだってそうでしょう?」

「うん、妬いてる。当たり前だろ」

お互い思っていた事は一緒で、それが何だかくすぐったくて。
俺たちは笑った。

外に漏れる微かな音色。
夜空で光る月と星は、俺たちだけに向けられた照明だ。
俺は肩膝をつくと、アメスの手をとってキスを落とした。

「俺と踊って頂けますか?」

「ええ、もちろんです」

そう微笑んだアメスの笑顔は、

どんなに綺麗なドレスを着た人よりも
どんなに美しいメイクをした人よりも

一番だと思う。


俺たちの関係は、人前で堂々と踊れるような関係じゃない。
こうやって、人のいないところでないと一緒にはいられないんだ。
でも、いつかは認められる様になりたいって思う。

「アメス、結構上手じゃん」

「そうですか?」

アメスが動く度に、ふわりと漂う香り。
何だか甘い様な、でもお菓子の香りではない。
この香り、何処かで嗅いだことがある気が‥

曲が終わると同時に、俺たちも動きを止めた。
楽しかった、と笑うアメスは俺に口付けをせがむ。

「な、どうしたんだよ」

「‥仲間に、勘付かれているんです」


私が、人間に会いに行っているコト。


「‥え‥?」

「だから昨日顔出せなくて‥、すみません」

俺の胸に顔を埋めるアメスの髪をそっと撫でてやった。
俺たちはエル・ディアブロにとって殺すべき存在。
そんな奴に毎日会いに行っているとなると‥‥

アメスが仲間から殺されかねない。

「セレスさん、私、」



もう貴方に会いに行けなくなるかもしれません




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