secret WISH



『‥ス、セレス!』

忙しく俺を呼ぶ声に
俺はハッと顔を上げた。

『何?』

『みて!あっち!!』

女の子が指さす方を見れば、
無数の白い花が咲き誇っていた。
その中に飛び込んではしゃぐ女の子は
俺のところに戻ってくると
手を引っ張って花畑の中に連れ込んだ。

『ね、キレイだね!』

『あぁ、そうだな』

綺麗なのは本当だけど
内心、どうしてコイツはこんな時に
はしゃいでいられるのだろうと思った。
こんな、先の分からない不安定な状態なのに。

『‥めいわく、だった?』

『え?』

何も言わなかったからか。
それとも、不機嫌な顔をしてしまったのか。
女の子は泣きそうな顔をして俺を見た。

『ずっと、わらわないから。わらったところ、みたことないから』

そうなのか?
俺、笑った事無かったのか?
夢で逢っているこの子の前で、
俺はまだ笑った事なかったのか?

『どうしたらわらってくれるの?』

『‥ゴメン、今はまだ‥そんな気になれないんだ』

『‥‥』

そう答えると、女の子は黙って下を向いてしまった。
俺、どうして笑ってやらないんだよ。
そう思うけど、夢の中の自分は操れない。

『でも、いつかはちゃんとわらうから。その時は―――もいっしょにわらってくれる?』

何か、思い詰めた声でそう言う俺に
女の子は顔を上げて。
満面の笑みで頷いた。

風に揺れる白い花の中、
『約束だからね』と差し出される小さな手。
小指同士を絡めたのは‥―――




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