secret WISH
城を出た俺たちは、
電車に乗る為に閑散とした街に出た。
昼間とは真逆に、静かすぎる街は
耳がおかしくなったのではないかと
耳を疑うくらいだった。
夜の今だから。
民家に灯りが灯っていてもいいのに
どの家も真っ暗で、
俺たちは電灯を持って歩く。
「街の人たち、皆ドルガーだったのかしら」
リビアンの呟きに、俺は小さく頷く。
そうかもしれない。
城で暴れていたドルガーは、
明らかに舞踏会に参加していた人よりも
とても多い人数だった。
きっと、ドルガーを城に来させて‥‥
「街の人たちは始末したから、舞踏会に来た沢山の御偉いさんを殺そうとしたってところか?」
「でも、何が目的? 貴族を殺して、財宝でも取ろうとしたのかしら」
「ん~、でも場所分かんねぇだろ」
「‥そうよねぇ」
ジャリジャリと砂を踏む音の中、
俺は後ろを歩くモルダを振り返った。
いつもは五月蝿いのに、何か静かだな。
「モルダは、どう思うか?」
「‥いや、俺も分からないわ」
暗いから良く分からなかったけど
モルダは興味の無さそうな顔をしていた。
眠たいのか?
でも、昨日はぐっすり寝たって言っていたし。
「え~っと、あ、あったわ。汽車」
時刻表を手でなぞりながら、
リビアンは俺たちを振り返った。
「良かった、明日の朝には帰れそうだな」
「ええ」
夜にはあまり似つかわしくない汽笛の音がして
俺は荷物を抱え直した。
リビアンが重たそうに持った荷物を
モルダは何も言わずに持ち上げる。
「‥‥」
そんなモルダを見たリビアンが
一瞬だけ目を見開いた。
汽車に乗り込んでいくモルダの背を
リビアンは暫く見詰めると
その後を追った。
‥どうしたんだ?