secret WISH
消える温もり
治安署に帰った俺たちは
早速、報告書を手渡された。
「ふあぁぁ~」
「よく眠れなかったの?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど‥」
よく、欠伸が出るんだよなぁ‥。
それにちゃんと睡眠とるのに
急に眠気が襲ってきたり。
どうなってんだ? 最近の俺。
ペンをくるくると回しながら
前に座るリビアンを見た。
ぼぅっとしているようだから、
目の前で手を振ってみせた。
「ぁ、な、何? 何か言った?」
「いや、何も言ってないけどさ、ぼ~っとしていたから」
そう言うと、リビアンは眉を寄せて俯いた。
その目線の先は、俺とリビアンの間にある
一つの椅子。
「モルダ、報告書も書かずに何処に行ったのかしら」
「『用がある』って言ってたじゃねぇか」
モルダは此処に帰ってくると、
治安署の案内人に荷物を渡して
『用がある』とだけ言い残して何処かへ行った。
リビアンは、さっきからそれを気に掛けているようだ。
「心配しなくたって、そのうち帰ってくるだろ。夜に任務入ってんだし」
「そうだけど‥、何かおかしいのよ」
「何が?」
スラスラと報告書にペンを滑らせながら訊けば
リビアンはさらに深く下を向いた。
「私がね、例えセレスでもお爺さんとでも2人でいると、怒るの。というか、異性の人と2人きりにさせる事なんてしないのよ?」
もし2人きりでいたりしたら、何処からか吹っ飛んで来て、割って入ってくるのに。
「それに、帰りもおかしいと思わなかった?」
「まぁ、いつもより静かっつーか、静かすぎたわな」
「‥でしょ?」
はぁぁ‥と落ち込んでいる様な溜め息に
俺はペンの動きを止めた。
「てか、スゲェな。そんな事あったんだ」
「‥毎日コレよ。『幼馴染を守る為だ』とか何とか言って、モルダが許す人くらいじゃないと、話させてくれないもの」
「へぇ~」
「そう言うくせしてね、自分は女の子ナンパし放題だし。‥ムカつく」
ぐっとペンを握るリビアンは、
下げていた眉を上げて、口をへの字に。
「‥‥告っちゃえば?」