secret WISH
報告書を書き終えた俺は、部屋に戻ってきた。
1日振りの部屋は、何も変わっていない。
オニキスが物を散らかしていると思ったけど
綺麗さっぱりなままだ。
「ただいま、オニキス」
部屋の扉を開けると、直ぐに出迎えてくれるのに
今日は昼寝をしていたようで、出迎えは無かった。
すぅすぅと寝息を立てるオニキスが
しがみ付いているのは、一つの石だ。
アメスが俺にくれた、チャロ石の塊。
試しにと、オニキスとそれを離そうとして
ぐいぐい引っ張ってみるが、離れない。
「なんて力してんだ」と思いながら
俺は自分の記憶を探った。
‥アレ?
この石、何処かで‥‥
大きな洞窟、
その中の階段を下って。
あのグレーの髪の女の子が手にしたもの。
『そのむらさきの石、なんだ?』
『しりたい?』
『うん、ずっと気になってたんだ』
『そうなの。‥じゃあ、教えてあげる。これはね、わたしの‥―――』
「私の‥‥何だったっけ?」
私の大事なもの?
私の宝物?
いや、大事なものと宝物って一緒じゃね?
ぐるぐると記憶を弄るが、頭が痛くなるばかり。
女の子が何と言っていたか
‥思い、出せない。
でも、同じ“チャロ石”という石だってわけで
同じ“石”ってわけじゃない。
あ~なんか、いけないぞ俺。
最近、変な夢ばかり見るからって
何でもかんでも現実のものと一緒にすんなよ。
一枚の紙と、ペンをとる。
「任務から、帰って、きた。守り師の、ところ、に行ってくる、から、な!」
そう紙に書いて、オニキスの隣に置く。
まだすやすやと寝ているオニキスを
アメスの様に優しく撫でて、部屋を出た。