secret WISH
失くされたココロ
モルダとリビアンがいなくなって、一週間。
俺は時間を見つけて、城と隣町にもう一度行った。
何か2人の物が落ちてはないかと
懸命に目を凝らすが何も無い。
「‥綺麗に、無くなってるんだな‥‥」
一人呟くと、ジャケットのポケットに
入って付いて来たオニキスが出てきた。
キョロキョロと周りを見渡すオニキスは
俺と同じ様に何かを探している様だった。
『‥教会に行ったんだ。そしたら、何も無かった』
『でしょうね』
『なぁ、何でだ?昨日の事は現実だよな?』
『ええ、全て現実ですよ』
『じゃあ何で‥ッ』
『綺麗にしたんです』
前に、アメスとこんな話しをしたよな。
あの時『綺麗にした』って言っていたけど
それって、ドルガーが人を喰ったって意味だったのか?
でも、飛び散った血は‥?
第一、本当に喰われたのか謎だ。
リビアンが消えた地面に手を当てながら
俺は周辺を目で撫でた。
だって もし、喰われていたなら‥
言い方は良くないと思うが
血の一滴や二滴くらい、落ちていてもいいはずだ。
なのに、本当に何にもない。
喰われたというより、
消えたといった方が妥当じゃねぇ‥?
「‥‥綺麗、か」
「どうかしたのかい?」
男の声に振り向くと、長髪の男がそこに居た。
‥気付かなかった、こんなに近くに人が来ていたなんて。
俺、疲れてんだな。
でも、この男の頭も嫌な色してる。
銀色の髪なんて、大体が‥‥
「エル・ディアブロか‥?」
「知っている、というか‥その左の鎖骨辺りにチラつくのは、紋章だね?」
俺を指さして、男は笑った。
そう、俺の左の鎖骨上辺りには紋章がある。
「クラーヂマン、だね。クラーヂマンを見たのは、君で丁度10人目だ」
「へぇ~、二桁目突入じゃねぇか。良かったな」
そう言いながらイヤリングを武器に変形させると
その男は首を振った。
「今はね、戦う気にはなれないんだ。後に備えないといけないから」
「‥後に?」
そう言えば、あの女も言っていたな。
『お邪魔する』って。
「同じような事、仲間の女も言ってたぜ。‥お前ら、何企んでんだ?」