secret WISH
逃げ惑う人々の中、目を凝らせば
ぼぅ‥と光が揺れている。
光の中で、ファントムは兄貴の体を支えていた。
あのムカつくエル・ディアブロが
その光に攻撃をするが、それは届かない。
アレは、ファントムの結界か。
顔を伏せたままの兄貴は、肩で息をしている様に見えた。
近付くと分かる、ファントムが泣いていた。
「兄貴‥ッ!!」
「何だ、新手‥‥あ、あん時のヤツ!」
ニヤリと笑うそいつは、俺を向いた。
その後ろで兄貴の左目辺りから、
酷く出血しているのが見える。
「セレス、まともに戦っちゃダメ!!相手は治癒能力を持っているんだよ!!」
ファントムが叫ぶ隣で、兄貴は俺を見上げた。
「逃げろ」と口が動く。
「じゃぁ、そいつらは後で消すから。まずはお前でいいか?」
黙って武器を向けたその時、
兄貴とファントムと俺を黒い光が囲んだ。
こ、コレはッ!!
「ぐわぁ‥ッ」
眩しくもない光に、ソイツは目元を隠して膝を付いた。
これ、エル・ディアブロに効くのか?
そして瞬きした瞬間には、俺の部屋に来ていた。
「あ、兄貴‥ッ!」
「すまない、大丈夫だ‥」
「な訳ないだろ!!」
「そんなことより、今のは‥‥」
言葉が途切れた兄貴と、ファントムは机の方を見ていた。
オニキスが、俺たちを静かに見ている。
「‥ドル、ガー?」
ポタリと落ちる血の雫に、俺はタオルを差し出した。
武器を握ろうとする兄貴を止めれば
ファントムが術を出そうと構える。
「そいつ、殺さないでくれ」