窓際の夜想曲 ‐短編集‐
♪広縁の間奏曲
ベランダから見える"街"は温かかった。
様々な家が整列する筋。いくつもの筋が、時折2車線の道路を織り込みながら"街"という反物を作っている。
反物には桜並木や川によって模様が入っていて、それらの模様は、春の空気のせいか、染め物風に少しぼやけていた。
川の向こうには新しいと思われる団地、団地の向こうは山が連なっていて、太陽は今山の端を目指していた。
鼻に入る空気の味が違う。
自分の町とは違う。
だけどおいしい。好きだ。