地球妖精族
【3】
 ハンスの住む街ヘイトニールは大きな森そのものだった。
ハンスの木が殊更太いわけでなく、森全体がとても巨大だったのである。
トゥエンティは外にでてイサの世界を眺め、自分が小人になったように思った。
 巨大なリスにしか見えない妖精種シェンルカ。
彼らはとても友好的な種族で、なにより平和と緑を重んじていた。
巨大な森の世界イサ。
トゥエンティは穏やかにそこで数週間を暮らした。
バードソウルであるシルヴァンとリュフトヒェン・・・1羽と1人で一つの存在でもある彼らは、次元移動能力を失っていない稀有のバードソウルでもあった。
泣いてウルトピの元へイエヘンに戻りたいという彼女に、彼らは時間がかかるとだけ言った。生粋のメテオラと違って、彼らにとって他者を橋渡しするということは想像以上に困難なことなのだと言う。
 どのくらい待てばいいのだろう?
トゥエンティは不安だった。けれどもハンスに促されて外に出て、日々を過ごし始めるとここもそう悪くはないと思った。それでも、想いはウルトピへ向かった。
 20年。そう、彼女は20年も彼と共にあったのだ。
イエヘンでの穏やかで優しい思い出、ウルトピを助けて神殿の仕事を行っていたこと、小さな諍い、王への使者を果たし、予見をし、解呪を行っていた。
 幸せだった。確かにそれはあったのに、何故かこのイサにいるとそれは遠い夢の中の出来事のように思えてならなかった。その為トゥエンティは努めてイエヘンのことを思い出すようにしていた。夢のように留めて置けない。何故か忘れてしまいそうに感じた。大切なものほど忘れてしまいそうだと恐れた。早く帰らなければならないと・・・。
「早く・・・帰りたいわ」
 涙ぐみ呟くトゥエンティに、ハンスは何故か言葉少なかった。
ただ、とても優しかった。その優しさが、トゥエンティにはまたとても悲しかった。
< 20 / 26 >

この作品をシェア

pagetop