地球妖精族
 トゥエンティと人々が笑顔で輪になって踊りだした頃、神殿の奥深くからしずしずと、あの羅針盤が運ばれてきていた。その水晶は平たく円形であり、透き通ったその中に、方位らしきものが刻み込まれており、更にその中に、ピンク色の光とグリーンの光が封じ込まれていた。その光は不可思議な軌跡をもって、その水晶の羅針盤の中を縦横無尽に走り回っているが、やがてそれは規則的な円の動きへとなっていった。
 羅針盤を設置する台座が神殿の大広間にある。そこに安置されたときには、光は2つともぐるぐると羅針盤の内側を回るようになっていた。ピンク色の光は右回転で、グリーンの光は左回転で。トゥエンティは知らなかったが、それは彼女が召喚されたときと全く同じ現象だった。但し、彼女がこの地に舞い降りたときは、ピンクの光が左回転で、グリーンの光が右回転だったのだが、それを知る者はウルトピと、何人かの神官だけであった。 トゥエンティと人々は輪になって踊り、やがて踊りつかれてトゥエンティは踊りの輪を離れた。陽気な音楽を奏でている芸人一座の小姓が、冷たい飲物をもってきてくれた。
 トゥエンティは微笑んでそれを受け取り、一緒に踊っていた女性たちと一緒に祭りの為に設置されていた簡易ベンチに座り込んだ。ハッカのような涼しい味のついたその水は殊の他、踊り疲れた喉に気持ちよかった。
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