地球妖精族
娘たちはトゥエンティに、ほんのり甘い菓子をくれた。それは小さな星のような形をしたピンク色のお菓子で食べた事が無いものだった。羅針盤祭だけに振舞われるお菓子なのだという。芸人一座は陽気な音楽を次々に演奏し、面白い出し物を見せて回った。男たちは麦酒を飲み、腕試しをし、豪快に笑っていた。トゥエンティは不思議と違和感なく回りに溶け込み、みなと一緒に歌い騒ぎ何時しか夜になった。夜になっても祭りは続き、更に盛り上がりを見せていく。神殿は無数の松明で真昼のように照らされ、花火が上がった。トゥエンティはこんな風景を何処かで見たことがあると、ふとそう思った。何故そう思ったのか知らないが、何故か唐突にそう思ったのだ。そして人いきれの中に輝く何かを見たと思った。よく目を凝らしてみると、それは銀色に輝く翼を持った見たことも無い鳥であった。その鳥は時々背後を振り返り、そしてその背後からこれまたトゥエンティが見たことの無い髪の色をした青年が人ごみを掻き分けて進んでくる。・・・進んでくるように見えた。いや、トゥエンティは目を手で擦った。その鳥と青年は半分姿が透けていた。そしてどうやらその鳥と青年の姿は、誰にも見えていないようなのだ。トゥエンティは、思わず彼らを追いかけていた。花火が上がった。