前の席
[保健室]
「ベッドで休んでていいよ。
微熱あるから、大人しくしてな。
先生、職員会議行ってくるから」
先生にそういわれ、「はーい」と答えた。
あーあ、サッカーやりたかったなあ。
体育休みたくないのに。
ぼんやりそんなことを考えていると、
ガラガラっと保健室の扉が開いた。
反射的に寝たふりをする。
「失礼しまーす。」
毅壱だ。
「誰かいる?」
保健室にはあたし以外いない。
「・・・毅壱?」
いかにも、今起きましたって声。
わざとだけどね。
「璃子?」
カーテンを開けて、毅壱が言う。
璃子とは、あたしのことだ。
「怪我しちゃって。先生は?」
「会議中だって」
「まじかよ。璃子はどうしたんだ?」
「微熱。血出てるよ。手当てしてあげようか」
あたしは起き上がって、重い頭を抱えながらベッドから降りる。
と、同時にぐらつき、毅壱が支えてくれた。
「大丈夫か。とりあえず、寝てろ。自分で手当てするから」
「うん・・・ごめん」
ベッドに座り、壁にもたれかかる。
絆創膏をはがす音だけが響く。
ふいに、毅壱が言った。
「なあ、おれ・・・」
「ん?」
「いや、なんでもない。
サッカーいってくるわ」
「うん」
ガラガラ・・・
毅壱がいなくなった保健室は静まっていて、少し寂しかった。