前の席
家でぐっすり眠ったら熱は引いた。
学校で、いつもの席に座る。
毅壱の背中をつつく。
「ケガ、だいじょうぶ?」
やっぱり振り向いて、毅壱は
「ああ。お前、熱は」
と言った。
「だいぶよくなった」
「そ。・・・今日、放課後部活ある?」
「今日は休みだよ。なんで?」
「・・・前の話。廊下曲がったとこで待ってて」
「え、うん。」
前の話って何だっけ。
聞くこともないまま、今日も振り向いた毅壱としゃべった。
放課後、「廊下を曲がったとこ」に行くと、既に毅壱がいた。
「おう」
毅壱の足には絆創膏がついたままだ。
「前の話ってな」
前の話って何と言おうとしたあたしの口を、毅壱が手でふさいだ。
あたしは壁と毅壱にはさまれた。
「ちょっ・・・きっ」
「おれな」
毅壱が真剣な顔になる。
「おれ――・・・」