♭―フラット
それからモルトは、良く理解できないことを語りだした。
ハナシはセカイの話で、それは誰かからモルトへと伝えられたのだという。

≪あれはね、本当にあったのかどうかさえ分からないセカイ≫

モルトは静かに続ける。

≪この世界にあるのか、それとも他のセカイにあるのか。それさえも分からない。もしかしたら無かったのかもしれない。そんな、私の中だけにある、セカイ。≫

≪貴方が、≫と彼女は言う。≪信じようが信じまいが、そんなことはどうだっていいの。どうせ真実なんて、誰にも分かりゃしないもの。でもね、私は信じてるの。だって、その方が……人生面白いに決まっているでしょ?≫

「やっぱり、意味分からんな」

≪当たり前よ。分かられても困るもの≫

「それは……≪あっ!≫

モルトが急に大きな声を出す。

「どうした?」

≪ええ、もう学校に行かないと……≫

「今更行くのか?」

≪いろいろとね。17歳にはいろいろあるのよ≫
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