♭―フラット
≪じゃあ、また後ほどお会いしましょう。行ってきます≫

「ちょっ!!」

そう言ったっきりオルゴールの音とともにぷつっと切れた。
もう、何も聞こえない。



「あら?やっとお目覚めね」



はっと気が付くと汗が首を伝っていた。
息が荒い。
空は紅く焼けていた。
館内に人は居らず、居るのは自分と美琴だけ。
数分の時間だと思っていたら、それは数時間にもなっていた。
まるで浦島太郎だ。

「どんな夢を見てたのかしら?」
「ははっ……どんなのだったかな?憶えてないですよ……」

夢……だったのか?
いや、そんなことはない。
あれは確かに、現実だ。
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