♭―フラット
「あ。美琴さん、でしたよね?」
「あらひどいわ。好みの女の子は一発で憶えるのに、私はハテナなのぉ?」
「そんな特技持ってませんよ」
「ううっ酷いわ。私なんてどうでもいいのねっ」

およよ、と泣き真似をする美琴さんを見て、図書館にいる学生の視線がグサグサと突き刺さる。
なんで俺がこんな目にぃ。

「ひーどーいーわぁあ~」
「・・・・・・。気は済みましたか?美琴さん」
「・・・・・・。」



「ええ。楽しかったわ」

美琴はけろり、と笑顔に戻った。

「俺で遊ばないで下さいよ」
「えーいいじゃない。暇なんだし」

「俺は暇じゃないですよ」
「んーそれもそうね。ま、頑張れ新入生っ」
「そうします」


美琴の遊びに付き合った後、俺はレポートの資料探しに奔走した。
薄情なことに美琴は手伝ってくれなかった……。
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