キミは大切な人


不安の渦がにわかに大きくなり始めた頃、彼はようやく笑顔を見せてくれた。



「心配するなよ。俺にとって、おまえはすっげー大切なヤツだから」


「……ほんとう?」


「あぁ。もし気持ちが変わったとしても、俺はあそこまで酷い振り方はしないよ。むしろ、今まで付き合ってくれてありがとうって感謝するよ」


「……やだ、いずれ振られるみたい」



一度かき消された不安が、少しずつ大きくなる。

彼はそれを一つ残らず消し去るかのように、あたしをキュッと抱きしめて、言った。



「大丈夫。俺はおまえのこと誰よりも大切だと思っているから。……案外、俺のほうが振られたりして」


「そんなことないよ」


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