キミは大切な人


「……どういうこと?」



ある日、いつものように尋ねた彼のマンション。

そこには、いつだったか、彼がこっ酷く振った彼女がいた。


見るからに、未練がましい彼女が復縁を迫っているようではない。

彼も、彼女も、幸せそうな顔して、ぴったりと寄り添っている。



「……悪いな。実はさ、俺と彼女、倦怠期だったんだよ」


「倦怠期……?」



顔をしかめながら首を傾げるあたしに、今度は彼女が言う。



「そう。倦怠期がくるたびに、彼は面白い方法で乗り切ることを提案してきたの」


「面白い……方法?」


「つまり。あたし以外の女と一緒にいるところを見せつけて、あたしをこっ酷く振るってワケ」


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