キミは大切な人
言葉を失っているあたしに、さらに今度は彼が説明する。
「コイツが泣きそうな顔をするたびに、俺はコイツへの気持ちを再認識するんだ」
「そしてあたしは、彼が他の女と一緒にいるところを見て、彼への気持ちを改めて知るの」
“やっぱり、コイツしかいない”
“あたしには、彼だけ”
非情なまでの、倦怠期の乗り越え方。
あたしはようやく出てきた言葉で、彼に問う。
「あたしのこと……大切だって言ったでしょう?」
「あぁ、もちろん大切だよ。倦怠期をうまく乗り切るための、大切な存在だよ」
悪びれた様子もなく、彼は“ありがとう”と感謝の言葉を付け足す。