キミは大切な人


あぁ、そうだった。

確か彼は言っていた。


あたしを振るときは、優しい振り方をするって。

むしろ、感謝するくらいだって。


それにあたし……。

彼から“好き”という言葉を、一度ももらっていなかった。



「ありがとう」



彼女も同じように、幸せそうな顔であたしに感謝する。



つまり。

あたしは、倦怠期を乗り切るための“道具”に過ぎなかったってこと。

そして、あたしへの愛は、最初っから存在していなかったんだ。



それなら、あたしも――……





< 8 / 11 >

この作品をシェア

pagetop