猫っかぶり彼氏。〜天然王子=俺様彼氏①〜
バスに乗り換えたころ、
シオがうつらうつらし始めた。
「昨日、嬉しくてあんまり眠れなかったんだよね……ナチと、初めての旅行だから」
シオは眠たそうに手の甲で目を擦り、大きな口を最大まで開きあくびをした。
あくびをしたせいで、少し潤んだ目が、私の心に矢を突き立てた。
……あくびで胸キュンさせる、なんて。ずるい。
シオは外見もアイドルに劣らないし、中身だってこんなだからとてもモテるはず。
そんなシオを彼氏に持つ事が、少し自慢に思えた。
と同時に、ちょっぴり不安になった。
シオのことを好きになる女の子はたくさんいるってこと。
それは、彼女は私でなくてもいいってこと?
「いいよ、肩貸してあげる」
私は無性に、シオに優しくしなくては、という気持ちになった……。
「ん、すぐ起きるよ」
「ゆっくり寝なよ、まだまだ、先は長いんだから。着いたら、起こしたげる」