猫っかぶり彼氏。〜天然王子=俺様彼氏①〜
「乗り過ごした分のお代は要らないよ。旅行楽しんでね」
優しい運転手さんにお礼を言って、私達は歩き始めた。
肩を並べて。
並んで歩くのは幸せ。でも、何か足りない。
「…ねぇ、シオ、手、繋ご?」
「えっ?ナチからそんなこと言ってくれるなんて……珍しい。そんな可愛いこと言われ続けたら、僕の強〜い理性でも持たないよ?」
シオの大きい目が、小さい子供が悪戯するときみたいに意味深に動いた。
『それでも、いいよ』
……なんて言えるか、ばかぁ!
シオが突然吹き出した。
「ナチ、面白い。表情が、百面相だ」
「え?」
大笑いを始めたシオを、両手でポカポカ叩く。
シオはそんな私の左手を捕まえて、繋いだ。
「恋人繋ぎ、ね」
私の左手の指とシオの右手の指が、絡み合った。