猫っかぶり彼氏。〜天然王子=俺様彼氏①〜



瞬間、強い風が吹いた。

今の私の声はシオには絶対聞こえなかっただろう。

嬉しいような、ちょっと物足りないような。
不思議な気分。

乱れた髪を空いた手で直していたら、シオが繋いでいた手をパッと離した。


「シオ?」

「よく……誤解されるんだ」


シオは私に向き直って、いつにない真剣な眼差しで私を見つめた。
吸い込まれそう、……陳腐な表現だけど。


とにかく、
私はこんなシオ、初めて見た。


空気が、揺れた気がした。






< 37 / 202 >

この作品をシェア

pagetop