猫っかぶり彼氏。〜天然王子=俺様彼氏①〜
瞬間、強い風が吹いた。
今の私の声はシオには絶対聞こえなかっただろう。
嬉しいような、ちょっと物足りないような。
不思議な気分。
乱れた髪を空いた手で直していたら、シオが繋いでいた手をパッと離した。
「シオ?」
「よく……誤解されるんだ」
シオは私に向き直って、いつにない真剣な眼差しで私を見つめた。
吸い込まれそう、……陳腐な表現だけど。
とにかく、
私はこんなシオ、初めて見た。
空気が、揺れた気がした。